「あれ?乗るの?
じゃあルールは視聴者の意見を元に、自分への褒め言葉なら強化、相手への褒め言葉は否定する。
最終的に言葉が続かなくなった方が負けってことで」
「……わかった」
静かに淡々と、黒い火花が部屋に渦巻く。
爽真の同意を合図に、2人同時にまずはアンケート全項に目を通す。
視聴者から見た2人の魅力を募ったアンケート。
序盤は容姿や性格を褒める言葉が並ぶ。
そして、ページを追うにつれ内容が恋愛観に絡むものになっていく。
ほぼ同時に中間以降のページに到達した途端、あれだけ臨戦体制だった2人の時が止まった。
「ちょっと待って」
「……」
爽真の眉が怪訝に寄る。
紫苑の口元も苦笑いで引き攣った。
「これ――俺ら2人とも、瑠奈ちゃんを好きな前提で語られてるんだけど。
いいのこれ?色んな意味で」
さっきまでカメラやスタッフがいた空間を眺めるけど、そこにはもう誰もいない。
まだ内容に引いている紫苑に、爽真はしれっと顔を背ける。
「迷ってんなら降りれば?無駄に時間使わなくて済むし」
今度は紫苑の眉がピクリと反応する。
「降りるわけないでしょ。番組的にアリなのかって一瞬考えただけだから」
その意思を示すように、椅子に深く座り直す。
けど、一拍置いて少し冷静な顔になった。
「……今からやり合う内容は、あのドアを開けた瞬間にお互い綺麗さっぱり忘れる。それでどう?」
「同意」
かくして、カメラもないのに爽紫戦争が勃発した。



