――……
いつもの談話室に入るなり、唐突に栞に抱きつかれた。
「……裕太が、ナオを好きって言ったの。
やっぱり私のことなんてどうでもいいんだ。大和、慰めて……」
俺の胸に顔を埋め、さめざめと弱音を吐く栞を、
どこか他人事のように見下ろす。
甘ったるい香水の匂いがまとわりついて、胸焼けを起こしそうだ。
目の前では、カメラがこの瞬間を“運命の急展開”として逃さず捉えている。
否応なしに“仕事なんだからちゃんとやれ”を突きつけられて、息が苦しくなる。
撮影最終日、運命の告白まであとたったの数日。
それまで俺は――栞に恋をして、尽くして、番組を盛り上げなくちゃいけない。
栞の背中に手を回しかけた時、ふっとキッチンの風景が浮かぶ。
この家の中で、俺が唯一息ができた場所。
それがとてつもなく、恋しくて。
「……俺にしなよ、栞」
息を吸って一息に、栞のことを抱きしめ返す。
「俺なら栞を泣かせない。1人になんてしないから――」
この日のシーンが話題になって、“大和”の人気は爆発的に上がった。



