『……1人で行ったの?』
『……うん、そうだよ?』
なんで紫苑とのこと、隠した?
『言ったでしょ?
紫苑一本化は理に適った作戦なんだって』
“理解者”であることが、瑠奈が俺に許した唯一の立ち位置なのに――
想いが強くなればなるだけ勝手に欲が増えて、その立場すら捨てて、瑠奈の決めた道を阻んでしまいそうになる。
もうとっくに、深夜だけじゃ足りてない。
朝も、昼も、夜も。
瑠奈の隣にいるのは、いつだって俺がいい。
このまま側に居続けたら――
多分俺は、そう言って瑠奈を困らせる。
生温い海風が2人の間を通り抜ける。
それに攫わせるように、爽真の表情から感情が消えていった。
溢れて暴走しそうな感情を、押さえつけて消すように。
「白石の仕事だろ。好きにすれば」
髪を抑える美玲の顔は、ほんの少し暗くて。
だけど、やっぱり綺麗に笑うだけ。
「……うん。私、頑張るね」
この日から、台本は音を立てて壊れ始めて。
深夜に爽真は、来なかった。



