「瑠奈ちゃんはシロップどれにする?」
緑と赤のシロップの瓶を両手に持った紫苑が、隣に来た私に向かって笑顔を向ける。
「瑠奈はぁー、いちごにしようかな♡」
「ふ、っぽいね」
紫苑が少し意地悪っぽく口角を上げて、私に赤いシロップの入った瓶を渡してくる。
陸が、きょとんとしてそれを見ていた。
「なんか最近、紫苑さん瑠奈の扱い雑になりました?」
「これが普通!むしろ今までが優しすぎるくらいだったんだよ」
“仲良くなっている”とも取れる表現に、彩加が間髪入れずにツッコむ。
彩加はそれからすぐ、フォローを入れようと美玲の方に向き直った。
「美玲!今のは陸の日本語が不自由なだけで――……」
美玲の耳に、その声は届いていない。
ぼうっとして見える儚げなその横顔は、まだ階段下から動かない爽真へと向いていた。
「わぁ、瑠奈ちゃんシロップかけすぎ。また事件現場みたいになってるよ」
「……!これくらいしたほうが、甘くて美味しんだよぉ?」
痛いくらいに響く、私と紫苑がやり合う声。
爽真が静かにキッチンに背を向けて、リビングのドアへと歩き出す。
「……爽真くんっ」
私がそれに気づいたのは、焦った美玲が爽真を呼ぶ声を聞いた時で。
(爽真?)
顔を上げた途端、目に映ったのは美玲の声にも反応しないで、部屋を出て行こうとする姿だった。



