「……どいて」
冷たい目。淡白な声もいつも以上に鋭くて、氷点下まで冷え切っている。
深夜に初めて鉢合わせた時――いや、それ以上の冷徹さ。
爽真の感情が、一切見えなかった。
演技で覆ったはずの胸が軋む。
なんで?
今までどんなに淡白にしてたって、爽真の感情はなんとなく読み取れていたのに。
動揺と不安が、ほんの一瞬表面に滲む。
その瞬間だけ、爽真の瞳が揺らいだ気がした。
体の横に置いていた指がぴくりと動く。
爽真の感情はわからない。
だけど、どうしてか、今その手を取らなくちゃいけない気がして。
(だめ、今は。カメラの前。私も爽真も、舞台の上)
同じような暗示を、頭の中で何度も繰り返す。
爽真を見続けているから葛藤するんだと気づいて、無理やり首をみんなのいる方に向けた。
「かき氷、できたぁ?瑠奈の分はっ?」
明るすぎるくらいに明るい砂糖声で、パタパタと走り去る。
さらりと流れた巻き髪の余韻に、爽真の視線が静かに落ちる。
何も感じないようにする。そう決めた。
そんな風に見える表情だった。



