(落ち着け、今は演技中。カメラだって回ってる)
見開いてしまった目を、なんとか笑っている目に戻す。
気づかれないように深く息を吐いて、口元にも微笑みを浮かばせた。
「……もうっ遅いよ、2人とも。
かき氷が溶けちゃうとこだったぁ」
ぷく、と片方の頬を膨らませて、あざとい悪女の演技。
「瑠奈は何もやってないし、食べないって言ってたじゃん!」
……なんて、向こうから彩加のツッコミも飛んでくる。
私を見下ろす紫苑の表情がふっと緩んで、愛でるように笑って肩を揺らした。
「ごめんごめん。着替えに時間かかっちゃってさー」
紫苑が軽い足取りで、残り半分くらいだった階段を一気に降りてくる。
一瞬子どもっぽく砕けて見えた顔は、リビングに降り立つといつも通りの爽やかな王子顔になって、私の前を通り過ぎていく。
「着替え中に急に陸が入ってきてさ。
ちょうど爽真にTシャツ借りようとして近づいたとこだったのに、なんか変な勘違いされて――……」
みんなのところに辿り着いた紫苑が、雑談っぽく弁明している。
(なんだ、陸の勘違い……)
じゃあさっきの表情も、まだスイッチ入れてなかっただけか。
そうホッとしかけた時、すぐそこまで降りてきていた爽真と目が合った。



