バッと勢いよく爽真が振り向く。
その表情に余裕はなく、強い焦燥が滲んでいる。
それを見た紫苑がクッと小さく笑って肩を揺らす。
鬱憤を晴らすかのように畳み掛けた。
「オフの日に映画、一緒に見たの。聞いてる?
“超ドマイナーB級映画”なんだけど」
『聞いてもわかんないと思うよ?
超ドマイナーB級映画だから』
表現が瑠奈と一致していたのは、偶然。
けど、爽真の心を更に抉るには十分すぎる偶然で。
爽真の目が見開いて、表情が険しく歪む。
反応を得るごとに、紫苑の微笑みは冷ややかに深まっていく。
「瑠奈ちゃんは、爽真を大事にしてるみたいだけどさ、」
爽真と距離を詰めた紫苑が、その肩口に手をかける。
毒を刺すようにすぐそばで囁いた。
「それと恋愛感情は、全く別の話だよね」
言い切るより早く、爽真が紫苑に振り返って強く肩を掴む。
鼻筋に皺が寄るほど強く眉を寄せて、睨みつける。
抑えが効かない感情を押し込めるように歯を食いしばって息を吐く様を、紫苑は余裕の笑みを取り繕って眺めている。
瀬戸際の睨み合い。
どちらが先に沈黙を破るかと、緊張が高まり切った時――
――バン!
ノックもなしに部屋のドアが開け放たれる。
元気よく、陸が部屋に飛び込んできた。



