ざわり。
美玲が起こした風が運ぶ清涼な甘い香りに、胸がざらつく。
その感覚を誤魔化して目を伏せた時――
ちょうどカメラが移動したタイミングで、紫苑が壁に向かってぽつりと呟いた。
「美玲ちゃん。今日ちょっと変なんだよね」
思わず紫苑に視線を向ける。
「もともと器用に演技するタイプじゃなかったけど……
今日は輪をかけて受け身だったというか」
蜂蜜色の目が、ゆっくりとこっちを見る。
私の中に、一滴の疑惑を落とすように。
「この違和感、なんだろうね?」
ドクンと、緊張が胸を叩く。
紫苑の視線に誘導されて見た先には、2人でしゃがみ込んで作業をしている爽真と美玲がいる。
一生懸命話しかけているように見える彼女を見つめる爽真の顔が、私といる時よりずっと穏やかなように見えた。



