――……
「わぁ、すごーい♡これ、美玲ちゃんが描いたの?」
繊細な色遣いの花火の絵を見上げて、態とらしいくらい甘ったるい声を出す。
美玲と紫苑の間にしっかり割り込んで、紫苑の腕に手までかけちゃって。
出来過ぎなくらい完璧な、強敵を牽制する悪女ムーブだ。
「そうなの。美術系は結構得意で……」
邪魔されても控えめに笑う美玲の目が、横目に遠くの爽真を捉える。
1人で感情を押さえつけるように、虚で物憂げに立ち尽くす爽真を。
その感情に引っ張られるように、美玲の顔から笑顔が消える。
一寸のズレもないよう丁寧に花火の線を描いていた美玲の手が、中途半端な位置で止まった。
「瑠奈ちゃんがここにいてくれるなら、私はあっちを手伝ってこようかな」
そう言って、美玲が筆をペンキの缶の中に戻す。
紫苑との関係を脅かす悪女が乱入してきたというのに、少しの躊躇いもなく、美玲はさっきまで私がいた方向に向きを変える。
「爽真くん」
可憐な声が、その名を呼ぶ。
夏風にミルクティー色の髪を靡かせて、爽真のところに走って行った。



