爽真のではない確かな圧のある視線を、顔を向けた先に察知する。
前を向けば、目だけ笑っていない紫苑がこっちを見ていた。
(……怖っ!ピュア恋劇場やってたんじゃなかったの!?)
拗ねているように細くなる紫苑の目が、無言で語りかけてくる。
“契約、忘れてないよね?”
“……もちろんです♡”
焦って全力笑顔を返して、跳ねるように立ち上がった。
「……っ、」
すぐに駆け出そうとした足が、ほんの数秒だけ躊躇う。
“これは、契約のせいだから”
脳が勝手に言い訳をして、危うく振り返りそうになる。
でもだめ。紫苑が見ている。
昼の私の視線は、全部紫苑に渡す。
その契約を違えるわけにはいかないのだ。
「……紫苑くんっ♡」
演技だよ。全部。
爽真なら、わかるでしょ?
そんな驕った信頼があるから、わき目も振らず紫苑に走る。
これを爽真が気にするのかどうかすら、私は知らないのにね。



