台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


答えはイエス。1人で行った。
けど、隣には紫苑がいた。

強く青白い光に照らされた、紫苑の横顔がフラッシュバックする。

忘れさせるものかと何度も握り直してきた、徐々に温く馴染んでいく冷たい手の感触。


『香月さん!楽しかった!また、夕方ね!』
『うん、またね。成宮くん』

なんて、放課後の友達同士みたいな別れの挨拶。


たった2時間強の紫苑とのあれこれが断片的に蘇ってきて――

なぜか、すごく後ろめたくなった。


「……うん、そうだよ?」

そのせいで視線を逸らしたのは無意識。

意識して貼り付けた笑顔を見た爽真の顔が、ほんの少しだけ静かに曇った。


「ふーん。そっか」


追求がなくて、ホッとしたような残念なような。

悪いことをしてるわけじゃないんだから、“あったこと”としてさらっと言ってしまえばよかったのに。


「爽真は?何してたの?」

「……俺は家で残りの宿題片付けたり、買い物行ったり」

「へー。結構ゆっくりしてたんだね」


自分が隠し事をしたのに、表面を撫でるだけの会話がちょっと寂しい。


一度隠したら、後悔しても訂正できない。
説明できない罪悪感が、胸を支配し始めた。