紫苑投入で、一層賑やかしくなる私の半径1メートル圏内。
その範囲外で立っている爽真が、ひよりの目に留まった。
「あれっそういえば爽真くん、美玲ちゃんは一緒じゃないんですかっ?」
ズッキーン。
無邪気な刃が、すでにおかしくなっている心臓に突き刺さる。
聞きたくないのに耳だけ爽真の方に向いて、ぐぐ、と無意識に唇を噛んだ。
そっちを向いていないのに、なんとなく視線は感じる。
悪女顔に、髪に隠して密かに気まずさを滲ませた私の横顔を、爽真はどう見ているんだろう?
「……今日は別。
そもそも昨日一緒だったのも、白石のマネージャーが別現場に行ってたせいだから」
(え。そうなの?)
唇の力が抜けて、ほんのすこし隙間が開く。
だからって、爽真と美玲が同じ事務所だって事実は変わるわけではないんだけど。
「……っていうか、なに?その“白石”って他人行儀な呼び方」
「別にいいだろ。撮影前なんだから」
若干引きながら聞く彩加に、爽真は飄々とそう答える。
あまりの淡白さに、陸が興味津々で爽真に寄って行った。
「ちなみに俺のことはなんて呼んでるんスか?」
「……。陸」
「はいっじゃあ私はなんて呼ばれてますかっ?」
「春野」
「……あたしは?」
「二階堂」
「男女で呼び分けてるんか」
「意外と普通に男子っスね……」



