「ここは人いないからまだ許したけど、外は無理。
話題の高視聴番組に出てるんだから、そのくらいの危機管理はしっかりやってよね」
説教くらわしてビシッと紫苑を指差す。
こんなくだらない誤解で炎上なんて、冗談じゃない!
「……」
紫苑は何も返さない。
びっくりして固まって、ぽかんとしている。
なんだかよくわからないけど、今のうちっ。
さっさと逃げてしまおう。
「ってことで、今日は解散。はい、さようなら〜」
言ってすぐ踵を返して入口を目指す。
私の髪がさらっと円を描くように揺れたのを見て、紫苑が時を取り戻した。
「香月さん!」
後一歩で外に出られたのに、呼び止められたから振り返る。
「楽しかった!また、夕方ね!」
――なに?この青春少女漫画の一コマ。
背景は心霊スポットみたいなオンボロ映画館なのに。
紫苑の爽やか王子属性な見た目は、そこをチャイムが鳴る校舎前に変えてしまう。
(そりゃ、メインキャラに抜擢されるわけだ)
またがっくりと肩が落ちて、苦笑いが漏れる。
「……うん、またね。成宮くん……」
もう“香月さん”で、会うことはないと思うけど。
私が出て行った後のガラスの押し戸を、紫苑はじっと見つめている。
その頬には仄かに赤が差して、含んだ笑顔は甘かった。



