――……
「はい、どーぞ」
「あ、ありがとー……♡」
窓口から捌けると、当然のように差し出されたチケットをぎこちなく受け取る。
なにこれ、ストーカー!?
偶然にしてはできすぎた偶然なんですけど!?
目の前で綺麗に微笑む紫苑に恐れ慄く。
ブルーウォッシュのデニムシャツに、アイボリーのパンツ。
制服を脱いでも爽やか王子のままの見た目が、より恐怖心を掻き立てる。
“瑠奈”の顔して笑いながら、警戒心をビシバシ放つ私を見て、紫苑はやれやれと一息つく。
「言っとくけど、ストーカーとかじゃないからね?
ホント偶然。ここ、よく来るとこなの」
「嘘っ!」
だって私も行きつけだもん。紫苑のことなんて見たこともない。
「嘘じゃないって。今回の映画。ヤマセジョージ監督作品。
この人が撮る廃墟映画って、ストーリーは安いのにやけにホラーチックで良くない?」
「めちゃくちゃわかる……!」
あ。
うっかりふつーに共感してしまった、
「ね?嘘じゃないでしょ?」
目元は帽子の影になっているのに、柔らかく弧を描く唇が笑っていることを伝えてくる。
なんとなくくすぐったそうな、そんな感情まで聞こえた気がした。



