――2時間前、爽真と美玲を乗せた車内では。
「よし、じゃあ発進するね〜」
「よろしくお願いします」
ミニバンのバックミラーには、美玲と爽真が並んで座る姿が映る。
エンジン音がかかると、車はゆっくりと旋回して駐車場の出口を目指す。
「アオバケ、すごい評判いいよ〜!
美玲も爽真も人気出てるし、ロケ後の仕事も結構きてるよ」
運転をしながら三木さんが上機嫌で話をする。
「本当ですか?ありがとうございます」
素直に喜んで笑う美玲の隣で、爽真は少しピリついた空気を醸している。
「特に、最新話!あそこの爽真、あれは絶対紫苑派から切り替えた人が――……」
「三木さん」
明るい車内を、重く静かな声が制する。
バックミラー越しに、爽真が真顔で三木さんを目で刺した。
「俺の共演者に失礼な態度を取るのはやめてください」
しん、と静まり返る車内。かかっていたはずのラジオの音が、爽真の圧でかき消されたような錯覚がした。
「えっ……あー、ごめんごめん!
フジイ芸能事務所って聞いたことないなって、一瞬面食らっちゃってさぁー……」
“それより”と、軽い受け止めであっさりと話題が切り替わっていく。
ピリついたまま黙り込む爽真の横顔を、美玲はまた心配そうに見守るだけだった。



