「みたらぁああああああいっ」
“瑠奈”の皮は被ったまま、けれど全力で御手洗の元に走っていく。
その勢いのままもやしのような体にぶつかると、折れんばかりの力で思いっきり抱きついた。
「暑苦しい。離してください」
「じゃあジャケット脱ぎなよ!
わぁあ御手洗、会いたかったっ」
死んだような顔をしてなすがままになっている御手洗と、その胸に額を押し付けて抱きしめ続ける私を遠目に見ていたギャラリーがざわつきだす。
“あいつ、マネージャーにも色目使ってるんか……”
と、心の声が丸ごと漏れてるドン引き顔の陸と彩加。
その隣のひよりは、「秘密の恋ですか!?ドキドキしますっ」って顔で目を丸くしてる。
ギリギリ“瑠奈”の形を保ちながら、転んだ子どものように御手洗に甘える私の頭を見下ろして、御手洗は“やれやれ”という顔でため息をつく。
「全くこの人は。少しは周りの目を気にしないと、余計な誤解を……」
少しして周りの視線に気づいた御手洗の目が、ふと止まる。
不審なものでも見つけたかのように、その眉が密かに寄った。
「ちょっと瑠奈さん。大丈夫なんですか?」
「なにが?」
「すごい顔でこっちを見てる子がいますけど」
「え」
振り返って御手洗の目線を辿ると、急に冷気が吹き付ける。
そこには、マネージャーに何か話しかけられているようなのに、全く耳に入れずこっちに釘付けになっている爽真の姿があった。



