唇を結んで、顰めそうになる表情を一生懸命我慢する。
楽しそうな紫苑の笑い声に混じって、ドアの向こうから誰かが近づいてくる遠い足音が聞こえてきた。
「残念、タイムリミットかな」
音を聞いてドアを見た紫苑が、あっさりと離れて掃除機を取りに行く。
――タイムリミット。
つまり、時間を作るために彩加に用事を渡したってこと?
わざわざ?なんで?
ここまで、なんの交渉も要求もなかったのに。
「……紫苑くん、何か瑠奈に用があるんじゃない?」
掃除機を手にした紫苑が、振り向いて答える。
「ないよ?瑠奈ちゃんに会いにきただけ」
あまりにあっさりと、当然のように言うから拍子抜け。
何か裏があるんじゃないかと思うまでに、数秒かかった。
「明日、帰省日でしょ?だから今日のうちにって思って」
「……今日の夜中に会うと思ってたけどぉ……?」
「それ、爽真もいるじゃん。2人っきりにしたかったの」
「……」
あんぐり。思わず開けた口が塞がらない。
紫苑がそれを見て、クスリと笑った。



