「いいよ、あの時間からは手を引いてあげる。
……その代わりに、瑠奈ちゃんは俺に何をくれるの?」
紫苑の細い指が、私の顎を捕まえて自分を見上げさせる。
逆光に翳る甘いマスクは、危険な笑みを湛えている。
“当然用意してるんだよね?”と、蜂蜜色の瞳が囁いている。
意図的に動じないふりをして、私も紫苑のネクタイを掴んでやり返す。
“ええ、もちろん”
そうやって、甘く微笑んで見せた。
「残りの撮影期間、“昼の瑠奈”を全部あげる。
番組のシナリオに則って、恋心も視線も誘惑も。
全部紫苑のためだけに使う」
これは、紫苑にとって悪くない条件のはず。
楽しいおもちゃに、つい最近“数字が取れる”っていう付加価値まで付いたんだから。
「本当は動画、チェックしてるでしょ?
紫苑×瑠奈、メインルートを超えるいいね数だった。
ここで私がより紫苑に夢中になって、盤面を荒らす。
そしたら番組的にも、紫苑にとっても、面白い絵になりそうじゃない?」
――まぁ、もともと紫苑一本化を推し進めていたから、そのついでなのは秘密だけど。



