台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


遠くに見えるシェアハウスから死角になる砂丘の陰で、私と紫苑は向き合っている。

少し歩かないといけない場所を選んだのは、空白の時間を少しでも引き伸ばすため。

でも、先に戻っていくカメラマンよりあまりにも遅いと、怪しまれる。


時間は思ったよりない。
だから、刺すなら短く、端的に、直球で。


紫苑は余裕ぶった笑みを浮かべながら、私の出方を待っている。

どの角度から、どう刺してくるのか。
いろんなパターンを考えて、クイズでも楽しんでいるかのようだ。


私の要求をストレートに伝えて、かつ、紫苑の意表をつく方法。


“瑠奈”らしい内股を解除して、ゆっくりとつま先を紫苑に向ける。

胸の前で組んでいた手もだらりとおろして、顎を引く。

最後に、甘い笑顔を消し去って、無機質な表情に張り替えた。



「“あの時間”に来るのを、もうやめてほしい」



いつも紫苑に聞かせる甘ったるい声より、幾分素に近い声。

紫苑の顔から余裕が消えて、驚きや圧倒、そんな感情が浮かんだ。

「……」

紫苑がゆっくりと呼吸をする。
奪われた主導権を取り返すように間を置いて。

またその顔は笑っていた。