番組の、表の世界に私と爽真の組み合わせはない。
当然だ。だって、ほとんど絡みがないんだもん。
今までの放送分で映っていたのは、
誰彼かまわず飛ばした矢印でちょっかいかける私と、
それを無視と無愛想で跳ね返す爽真だけ。
私と爽真の本当の関係を知る人は、誰もいない。
「瑠奈ちゃん、やっぱペア入ってたね。よろしく」
後ろからポンと肩を叩いてきた紫苑が、さりげなく私の顔を覗く。
あくまで自然に、“よろしく”を言うだけの距離感で。
(……やば、ぼーっとしてた)
頭の中で数秒、起動スイッチを探す。
パチッと入れたら、ちゃんと作った笑顔も声も出てきた。
「紫苑くんとのペアが人気なんて嬉しー♡
一位取ろうね♡紫苑くん♡」
盤面確認のクセで周囲を観察すれば、爽真の隣にいつのまにか美玲がいる。
今朝の続きとばかりに、自然なやりとりが続いているように見える。
(あ――、苦しい)
理由がわからないから、余計に苦しい。
「……では、順番に撮影を始めます!」
スタッフの指示で、順番にペアで呼ばれ始める。
この撮影はわかりやすく個人、そして各ペアの人気が可視化される。
世間に受け入れられたい悪女の私にとっては、超重要ミッション。
よくわからない感情に、振り回されている場合じゃない。
爽真から視線を外して、目の前の紫苑に集中する。
もう演技に潜ってしまおう。
集中して集中して、雑念を消す。
じゃないと夜まで、私が保たない。



