煉瓦坂の少し奇妙なX'mas

「仕方ないな、何かプレゼントはやろう。お歳暮を遅配したかお年賀を早送りしたと考えればいい」
「わざわざ言わなくていいのに……」
 実に残念そうな表情を浮かべる奈美子に溜息を吐く。物をやるのはやぶさかではないが、なるべくクリスマスと関連させたくないんだよ。それに宣言してこそ意味があるんだ、こういうのは。クリスマスでないと外形的にも示さなければならない。そう告げようとして、その内容が客観的にあまりにもこじれ切ってることに気が付いて、また溜息を吐いた。
「せめて家に帰ってクリスマスっぽい紙で包装してから開け直します……」
「お、それはいいな。そっちで祝う分には全然いい。なんならケーキも自宅に持ち帰って食ってもらえればなおいい」
「……一緒に食べたいんです。……クリスマスなんて一言も言いませんから」
 普段はどこか猫っぽいのに雨に濡れた犬みたいな哀れげな表情に、さすがに気が咎めてきた。

「何か欲しいものはあるか? まあせっかくだから何かやろう。今年世話になったと言えなくもない」
「あくまでもお歳暮で押し通そうとするんですね。でもええと、そうですね。この間作ってた身代わり人形の素材と魔法陣をセットでとか……?」
 あれは別に魔法陣というわけじゃないんだが。この時期になるとネットでっよく売れるのだ。
「お前、何かに呪われてるのかよ?」
 そう呟いて、奈美子は奈美子でにわか黒魔術の本なんか読んで胡乱な実験をしてるらしいから、1つ2つ呪われてても仕方がないような気はした。そうすると手作り、か。クリスマスのプレゼントっていうのはクリスマスを祝うためのものだから、違う目的ならいいような。しかしあれをクリスマス用に梱包するのか……? 少し気持ち悪く感じたが、それはあくまで俺の中の齟齬の話で、俺の手を離れたあとなら別にいいか。
「わかった、仕方がない」
「わーい。環さん大好き」
 さて、ここまで意味をずらせば変な呪いが降りかかるのは防げるだろう。そこまで考えて智樹のことが浮かび上がる。あいつは去年もクリスマスに変な幽霊を拾って風邪をひいていた。なんとなく可哀そうに見えたものに安易に同情して、二進も三進もいかなくなってから俺を頼ってやってくる。どうせなら未然に防げた方がいいから、あいつにもお守りか何か作ってやったほうがいいだろうか。しかしあいつが拾ってくるのは幽霊だけじゃないからなぁ。クリスマス包装された呪いの人形とか? まさかな。