煉瓦坂の少し奇妙なX'mas

「めりーくりすますぅ!」
「ますー!」
 なんだかやけに騒がしいく、とても頭が痛い。けど眠い……。布団をかぶろうとし手元はスカスカと何もない。観念して目をあければ、真っ白い。
「あれ? じゃあ夢?」
「そうですよ。なんでクリスマスの夜にこんな夢を見るんですか。……まあ他の人よりは多分マシでしょうけど」
「あれ? 要ちゃん? じゃぁ本当に夢、か」
 傍らを見れば、要ちゃんが呆れた顔で俺を見下ろしていた。
「それにしても本当に虚無ですね。風景が何もないなんて」
「もう何も考えたくないよ。灰になった気分」
「ともちゃん、大丈夫ー?」
「おうち帰らなくていいの?」
 声に慌てて体を起こせば、透明なもこもこしたものが何体か、俺の周りを取り囲んでいてビクリと後ずさったけれど、なんとなく心配げな空気を感じた。
「えっと? 誰」
「僕は僕ですーえへん」
「ともちゃん、プレゼント頂戴」
「プレゼント?」
 触ればぐにゅっとして慌てて手を放す。
「あの、大丈夫?」
「大丈夫だよー。それよりプレゼント」
「はいはい。お姉さんがプレゼントをあげますね~。このおじちゃんは酔っぱらって駄目になってますから~」
「俺、やっぱおじちゃんなの? 女子高生的に」
 どこからともなく靴下型の鞄があらわれ、要ちゃんは俺を無視してその中からクリスマスの飾りやら風船やら、そんなものを次々と取り出して見えない何かに配っていく。
「わーいクリスマスだ―」
「お祝いだー」
 歓声と、そのあとにジングルベルの歌が聞こえはじめる。何故だかその歌声は色がついてフワフワと空に昇っていってそのうち何かにぶちあたり、そこから次第に世界は晴れて、丸い夜空が現れる。なんとなくスノードームの中にいるみたいだ。そしてその歌声は、最近俺を悩ませていた歌声に似ている気がした。俺も歌った方がいいの?
「ねぇね、おうち帰らないの?」
「おうち?」
「そうそうー。最近おくっていけなくってーごめんねぇ」
「たまちゃんが閉じ込めたんだよー。酷いよねー」
「環が? なんで?」
「でもそろそろ朝だからー安全におうちに帰れるよー」
「帰れるよーたぶん、ほら」
 見えないなにかがが指さした気がした見上げる空は、だんだんと藍が薄くなり、次第にオレンジ色になって白くなり、気が付けば俺は白い天井を見上げていた。
「あれ? バックヤード?」
 スマホをみて飛び起きる。やばい、早く帰って風呂に入らないと開店に間に合わない。