煉瓦坂の少し奇妙なX'mas

「公理さん、あのツリーの下の袋に書いてるのって何ですか?」
「え、えーと」
「ね、パーティするの?」
「んと、お店の人だけで小さな打ち上げっていうか」
「それってプレゼント入れたら参加していいやつです?」
「いや、それはちょっと、そんなにこの店に入りきらないし」
「えっここでやるの?」
 そのあたりで俺は考えるのをやめた。
 はぁ。もう無になる。無になって髪を切る、のもなかなか難しいなぁ。トークも営業の一部だし。でもいちいちなんて断ったらいいのか悩むのなんて、俺に向いてないし。だからクリスマスツリーの下のメモを書き換えた。
『ここにプレゼントを入れた方は、クリスマス当日に代わりに1つ持っていくか、1000円の割引券を差し上げます。中身の保証は致しませんし、危険なものを入れた場合は通報します』
 そうして溜息を吐いたのは、袋の容積の増加が加速したからだ。
 なんだかこのツリーの周りだけ、俺の知らないルールに沿った異空間が展開してるみたいな気分だ。俺の本意とは全然違う何かの意思がここに溜まっているような。

 はあ。
 このツリー下の靴下袋は正直もう管理しきれない。もはや誰が何を入れたかわからないし、この時期のんきに監視カメラを見直す時間なんて全然ない。第一入れてないのに持っていく人もいるだろう。だから1000円分の割引券。割引クーポンならたまに配るし、経理上はいつもと同じ処理ができるだろうし。
 代わりに俺とか店員が入れたものは各自取りだしてもらって、バックヤードの別の袋に詰め込んだ。ここが新しいプレゼントの聖地だ。ここならもう、俺が毎日小さくいれるもの以外は増えやしないだろう。そう思って今日も袋を開けて、格好いい万年筆を投げ込む。そうして首を傾げた。
 もうプレゼントが増えたりしないはずだ。けどやっぱり何か小さな違和感がある。そうしてバックヤードを出て見つめたツリーの先は靴下袋からあふれ出た小さな箱がツリーの下を埋め尽くしていた。
「吾郷君、ケータリングのフードって増やせる? 簡単なスナックと1ドリンクくらいでいいと思うんだ。交換して、すぐに帰ってもらって」
「公理さん、大分疲れてますね」
「……自業自得なんだけどさ。もう何も考えたくない」
 心なしか体が重い気がする。
「フードは安く増やせますよ。もとの予約はもっと大人数用で、用意した食材の処分先に困ってたから」
 安易によろしくと発音しようとして、ますますのドツボに嵌っていないか頭の中で考えようとして、なんかもう疲れ切ってたから諦めた。
「よろしく」