放課後のことだった。
空き教室で、何か作業を任されていたのか、山積みのプリントの傍で、耳を押さえて震えている女の子が見えた。
「大丈夫?」
話したこともない。
だけど心配になって、廊下から声をかけた。
俺の声は届いてないらしく、教室に入って、彼女の前に行った。
涙目で震えていた。
「どうしたの?」
「怖い…」
「怖い?」
何か怖い要素はあっただろうか。
「急に話しかけてごめんね」
「そうじゃなくて…隣のクラスの話し声が、怖い…」
まあ確かに聞こえるが、俺には気になるほどではなかった。
「とりあえず、ドア閉めよっか」
俺は前と後ろのドアを閉めた。
彼女は落ち着いたようで、耳から手を離した。
「もう大丈夫」
目の揺らぐ彼女のことを、放っておけなかった。
「プリント、手伝おうか?」
「1人でできる。大丈夫」
軽く突き放すように言った。
巻き込みたくない、という気遣いなんだろうけど。
「早く終わらせて早く帰ろうよ」
「…うん」
流れ作業で、役割分担してやることになった。
「名前、なんて言うの?俺は、神楽諒」
「神谷瞳」
「神って字一緒だね!」
「うん…」



