フラワーリング

「このバラ、全部同じに見えるんですけど……」

一本の白いバラを見つめながら尋ねると、橘さんは隣に並んだ。

「よく見てください。」

そう言って一本ずつ手に取る。

「こっちは花びらが丸くて、こっちは少し尖ってる。」

「香りも少し違うんですよ。」

なるほど。

言われてみると確かに違う。

「すごい……。」

思わず感心する。

花を持つその指先は、今日も優しくて。

「あ。」

また見てる。

慌てて視線を逸らそうとした、その時。

「……また見てます?」

くすっと笑う声がした。

「えっ!」

勢いよく顔を上げると、橘さんが困ったように笑っている。

「ご、ごめんなさい!」

「ふふ。」

「もう否定しませんね。」

その言葉に、恥ずかしさで耳まで熱くなる。

「……無意識なんです。」

小さく呟くと、

「知ってます。」

そう返した橘さんは、また花へ視線を戻した。

その何気ない一言が、少しだけ嬉しかった。