フラワーリング

数日後。

橘さんから送られてきた住所を頼りに、私は初めてその花屋へ向かっていた。

普段は結婚式場でしか会わない。

仕事をしている姿しか知らない。

だからだろうか。

少しだけ緊張している自分がいた。

スマートフォンを開く。

『Flowers Tachibana』

送られてきた地図の先には、小さな花屋の名前が表示されている。

「……ここか」

思わず小さく笑ってしまう。

飾らない店名が、なんだか橘さんらしい。

小さく息を吸って店の前に立つ。

「あれ……?」

思わず足を止めた。

入口にあるはずの『OPEN』の看板が出ていない。

今日じゃなかった?

慌ててスマートフォンを開き、トーク画面を確認する。

『水曜日 14:00』

間違っていない。

首を傾げていると、店の扉が静かに開いた。

「久遠さん。」

橘さんが穏やかに笑う。

「あっ……こんにちは。」

「すみません。看板が出ていなかったので、日にちを間違えたかと思って……」

そう言うと、橘さんは少し照れたように笑った。

「今日は午後から店を閉めたんです。」

「え?」

「ゆっくり見てもらった方が、イメージしやすいと思ったので。」

その一言に、胸がふわりと温かくなる。

「……私のために?」

思わず聞き返すと、

「仕事ですから。」

橘さんは少し照れくさそうに笑って、店の中へ私を招き入れた。