一夜のあと、君に溺れる

泣きそうになっていると、杏子さんが優しく背を撫でてくれた。顔を上げるとニコリと柔らかく微笑んでくれ、その優しさが温かくてほっとする。

「桜子さんったら、大ちゃんのこと好きすぎかー」

「そうなんです、好きなんです」

正直に頷いた。
とたんに、ジタバタしながら照れだす心和ちゃんと千里ちゃん。「本物のピュアリンがここにいたー!」などと、訳の分からないことを言っている。ちなみに、ピュアリンとは心和ちゃんがハマってるアニメだそう。

「……なんか、私も恋したくなりました」

「次は千里さんの報告待ってます」

「私のお料理スキルどうにかして……」

「大丈夫大丈夫。大ちゃんはそんなことで幻滅したりしないよ。それより、料理頑張らなくちゃって努力しようとしてる桜子さんを見て、惚れ直しちゃうんじゃないの?」

「……じゃあやっぱり杏子さん、教えてください。ちょっとくらいは出来てたいので」

「いいよー。じゃあ今度うちおいでよ」

「はい、ぜひ!」

前のめりになる私を見て、杏子さんはまたケタケタ笑った。

改めて思う。人を好きになるって、すごい。大ちゃんのために何かをしてあげたいって思うし、自分をよく見せたくなる。それは普段人と接することと同じようで違う、特別な感情だ。

「私、幸せになりたい」

「もう十分幸せそうですけど?」

「大ちゃんとなら幸せになれますよ」

「私たちのお墨付きよ~。よし、デザートにこの幸せロールケーキを頼もう」

杏子さんがメニューをパラパラ見ながら、幸せロールケーキを4個注文した。すぐに運ばれてきたロールケーキは一切れずつお皿に乗って、ベリーのソースと粉砂糖が振りかけられている。フォークで切ってから口に入れると、とてもなめらかで舌触りが良く、するりと喉の奥へ消えていった。

「幸せな味」

「だね~」

恋愛もそうだけど、こうして笑い合える関係こそが幸せなのだとしみじみと実感した。