一夜のあと、君に溺れる

私ったら大事なことを忘れていた。同棲するとなったら、日々の食事問題がある。さすがに毎日外食とはいかないだろうし。何を隠そう、私の料理レベルはポンコツなのだ。

「あ、あああ杏子さん!」

「ん、なに?」

「私、お料理が全然できないんです」

「……いきなりどうしたの?」

「桜子さん、どんな妄想してたんですか? 主語がないですよ」

「もし、同棲したら、ご飯作れない」

「「「同棲?!」」」

「話早くないですか?」

「羨ましいー!」

「大ちゃんやるぅー」

千里ちゃんが驚き、心和ちゃんは目をキラキラさせる。杏子さんはニヤニヤしているし……ううん、そういうことじゃなくて、私の料理スキルの話をしているんだけど。

「どうしよう?」

「普段はどうしてるの?」

「実家暮らしだから母に甘えてて……」

「あー、まあ、実家暮らしだとそうなりがちですよねぇ」

「お嬢ですねぇ、桜子さん」

実家暮らしだからというのもあるけれど、実は中学の家庭科の調理実習でも卵焼きが作れなかったくらい、料理スキルがポンコツなのだ。自分にできる気がしないと思い続けて、ズルズルとここまできてしまった。食パンをトースターで焼くくらいならできるけれど、それ以外どうしたらいいかわからない。

「桜子さんの意外な弱点発見ですね」

「どうしよう。杏子さん、料理教えてください!」

「うーん、杏子のお料理教室を開催してもいいけど、私より大ちゃんのほうがお料理上手なのよ。大ちゃんに教わったらいいじゃない?」

「わー、彼氏にお料理教えてもらうなんて素敵ですぅ」

「確かに、その方が仲が深まるかもね?」

「できなさすぎて幻滅されないかしら……?」

「大ちゃんはそんなことしないでしょ」

「そんな男なら捨てちゃいなー」

むしろ、捨てられるのは私なのでは……?
想像して、さーっと血の気が引いた。
大ちゃんに捨てられたら悲しすぎる!