一夜のあと、君に溺れる

駅近くの路地を入ったところにある隠れ家的なお店。緑に囲まれた石畳の小道に、木の扉と柔らかな橙の照明にほっこりする。おしゃれなお店のチョイスは千里ちゃんが得意とするところだ。

「乾杯しますよ、乾杯!」

千里ちゃんの掛け声で、杏子さんと心和ちゃんが並々に注がれたビールを掲げた。急いで私もグラスを持つ。

「桜子さんにカンパーイ!」

「カンパーイ!」

カチンと綺麗な音が響いた。

「はい、じゃあどうぞ。桜子さんお話しください」

「え、ええっと……」

そう言われると、どこから話したらいいものか戸惑ってしまう。

心和ちゃんは目をキラキラさせて期待の眼差しで見てくるし、千里ちゃんもニコニコしながら聞き役に徹してくれている。杏子さんはニヤニヤしながら「湯葉とアボカドのサラダだって、美味しそう~」と、お皿に取り分けてくれている。

「あ、あの、私……お付き合いすることになって……」

「ひやぁぁぁぁ~! おめでとうございますぅ!」

「どうせそうだと思いましたよ。だって前回の女子会で、桜子さんったらめちゃくちゃ乙女だったし」

「そ、それでね。みんなにいろいろ教えてもらったから、好きって気持ちがわかって……、その、なんていうか、溢れてる……」

「ぐはっ!」

「はっ、千里さん、しっかりー!」

「桜子さんのキラキラオーラにやられて、私もうダメかも」

「あはは、桜子さんお幸せにねぇ」

杏子さんがお料理を分けながら、訳知り顔で頷く。

「なーんか、杏子さんだけ冷静じゃないです?」

「もしかして知ってたんです?」

「えっ? えへへ~、言ってもいいの、桜子さん?」

「ええ、それはもちろん」

「実は~、桜子さんのお相手は、私の弟の大ちゃんでーす」

「「ええーー!!」」

心和ちゃんと千里ちゃんは転がるかの勢いで驚き、なぜか杏子さんはドヤ顔をしている。
なんだか頬が熱い。嬉しくて恥ずかしいって、こんな感じなんだ。