一夜のあと、君に溺れる

目を覚ますと、隣でさーちゃんがスヤスヤと眠っていた。いつも通り朝から仕事だと言っていたから、早めに起こしてあげた方がいいだろう。

サイドテーブルに置いてあるスマホで時間を見て、まだずいぶんと時間に余裕があることを確認した。しばらくさーちゃんの寝顔を眺める。

うん、可愛い。
寝ても起きても可愛い。

『――好きなの、大ちゃん。大好き』

ぐわぁっ、思い出すだけでニヤける。
あんなに一生懸命告白してくれるなんて、可愛いが過ぎるだろう。

まさかさーちゃんと恋人になるなんて、だれが想像しただろう。さーちゃんは姉の友達で、俺とはただの知り合いで、姉の結婚式の日まで恋愛感情なんて少しもなかったはずなのに。

人生何が起きるかわからないものだ。

思い返せば、実花と別れたときだって、青天の霹靂のようなものだった。何も問題がないと思っていたのに、結婚の話に進んだらコロッと態度が変わった。実花は、俺の職業が気に入らなかったらしい。

あのとき少しばかり揉めたけれど、だからといって俺の中で未練なんて1ミリもない。別れてからは実花と会っていないし、連絡も取っていなかった。

だから映画館でバッタリ出会って、「やり直したい」と言われたときは、何を今さらと思ったものだ。

その後、何通もメッセージが届いていたけれど、すべて無視した。だって今の俺はさーちゃんのことが好きだし、実花のことを相手にするなんてさーちゃんに対して申し訳ないと思ったからだ。

さーちゃんがいなかったら、もしかして返事をしていたかもしれない。やり直すかどうかは別として、きちんと対応していたのかも……。

そのせいで実花が直接さーちゃんと話をするなんて、思いもよらなかったけど。

さーちゃんには嫌な思いをさせてしまったけど、マウントを取ったと聞いて溜飲が下りたことも事実。