一夜のあと、君に溺れる

空港のスカイデッキに上がると、冷たい風が吹き抜けた。夜遅いためか、飛行機の離着陸はあまりない。人もまばらで、静かだ。

柵から滑走路の方を覗き込む。滑走路に敷かれた誘導灯の灯りが青や緑に光って、とても綺麗。

「上から見たらもっと綺麗なんでしょうね」

「うん、でも十分綺麗よね」

ただぼんやりと、滑走路の灯りを見つめる。静かで冷たい空気が、体を洗練させてくれるみたいだ。昂っていた感情が、すっと落ち着いていく。

「寒くない?」

「うん、大丈夫」

ニコッと微笑むと、大ちゃんもニコッと笑ってくれた。その優しい笑顔を、私だけに向けてほしい。私だけが知っていたい。

「あのね、今日……」

「うん」

「……実花さんに会ったの」

「え、実花? なんで?」

「たまたま出会っただけなんだけど……。それでね、私、すごいマウント取っちゃって」

「何か言われたの?」

「うん、実花さんのお父さんが神木坂不動産の部長だって言うから、私は神木坂総合病院の理事長の娘よって。私の方が偉いみたいな感じで言っちゃって。性格悪いわよね」

「あはは! 何だそれ」

「ちょっと、何で笑うの」

「だってそんなの、さーちゃんの一人勝ちじゃん。あはは!」

てっきり引かれると思ったのに、大ちゃんはお腹を抱えて笑い転げている。すごく罪悪感に苛まれていたのに、私の言動が正当化されたみたいでちょっぴりくすぐったい。

「だって、負けたくなかったのよ」

大ちゃんの隣にいるのは私がいいの。他の誰にも譲りたくない。そのためには自分のコンプレックスだって使う。でもそれはやっぱり、ちょっと性格が悪いなって思ってしまうのも事実で……。

きっともっと穏やかな道があったんじゃないかとも思うけれど、あの時はあれしか思い浮かばなかったのだ。