一夜のあと、君に溺れる

車で迎えに来てくれた大ちゃんは、仕事疲れなんて微塵も感じさせないくらいに爽やかだった。

「どこか行く?」

「うん、静かなところがいい」

「夜景とか?」

「どこか知ってる?」

「うーん、じゃあとりあえず空港にでも行ってみましょうか」

そう言って、大ちゃんは車を走らせた。
夜はずいぶんと更けている。明日も仕事なのに大ちゃんを呼び出してしまって申し訳ないなという気持ちと、会えて嬉しい気持ちが交錯する。

「わがまま言ってごめんね」

「こんなのわがままなうちに入ります?」

「でも仕事で疲れてるのに」

「会いたいって言われたから、疲れは吹き飛びました」

「どうして?」

「俺も会いたかったから」

こちらをチラッと見て微笑んでくれる。車内は暗いのに、大ちゃんのかっこよさを認識して胸がキュンとなった。大ちゃんの顔を見ただけで気持ちが弾むって、私ったら単純すぎやしないだろうか。

「でも、何かあったんですか? ちょっと元気ない気がする」

「うーん、ちょっとあって……」

「俺には言えないこと?」

「……言ったら嫌われちゃうかも」

「何をやらかしたんですか」

「なんでやらかしになるのよーう」

「だってさーちゃん、意外と世間知らずでしょう?」

「大ちゃんったら、ひどい」

「あはは、冗談ですって」

深くは聞かず、笑い飛ばしてくれる。そんな気遣いが優しくて胸をぎゅっと締めつける。

不思議。

大ちゃんと同じ空間にいるってだけで、ずっとモヤモヤしていた気持ちが少しずつ薄れてくる。

大ちゃんを瞳に映して、大ちゃんの生の声を耳に響かせて、まるで経口補水液を飲んだみたいに体に染み渡っていく感じ。足りなかった栄養素が補充されていくみたい。

数時間前に実花さんとあんなことがあったなんて、嘘みたい。
ああ、このまま大ちゃんに溺れたい。