一夜のあと、君に溺れる

心臓がバクバクしている。普段、お嬢様だと思われたくないなんてまわりに豪語しておきながら、実花さんにはかなりのマウントを取った気がする。

……でも、負けたくなかった。大ちゃんを取られたくなかったから。

皮肉なものだと思う。自分のコンプレックスが役に立つ日が来るなんて思わなかったもの。

ずううんと重い気持ちにため息が出る。衝動的に大ちゃんに電話をかけたけれど、留守電に切り替わってしまった。きっと仕事中だ。

すごくすごくすごく、大ちゃんの声が聞きたいと思った。

私はこんなにも大ちゃんのことが好きなんだよって、伝えたくなった。叫びたくなった。

空に小さな星が見える。明るい街なかではあまり見えない星たち。その中でも煌々と輝く星。届きそうで届かない、その星に手を伸ばす。

当然届かないけれど……。

夜空に浮かぶ星たちはどれも同じものはない。大きさも輝きも違う、まるで人間と同じ。その中で、好きな人を見つけられる奇跡。なんて尊いのだろうか。

「……好き。……好き」

何度も声に出して好きな気持ちを確認する。好きという言葉が体に浸透していって、胸がいっぱいになった。

夜も更けた頃、大ちゃんから折り返しの電話があった。今日は仕事が忙しくていつもよりも遅く終わったらしい。

『ごめんね、さーちゃん。何かあった?』

もう、その声を聞けただけで、幸せでいっぱいになった。愛おしくてたまらない、大ちゃんの声。その優しい声音に胸がいっぱいになって、嬉しくてぐすっと涙が浮かぶ。

「……会いたい」

『今から?』

「……ごめん、迷惑だよね」

『いや、俺は全然大丈夫だけど、さーちゃんは大丈夫なの?』

「うん」

『わかった、すぐに行く』

大ちゃんは理由も聞かずに了承してくれた。

きっと仕事で疲れているのに、会いたいだなんてわがままを言ってしまった。

ごめんなさい、実花さんとあんなことがあったから、心が不安定なの。安心したいの。ただ大ちゃんと一緒にいたい、それだけなの。