一夜のあと、君に溺れる

「お腹すきません?」

「もうお昼だものね。どこか食べに行く?」

「食べたいものは?」

「うーん……大ちゃんは?」

「何でもいいけど……ラーメンは?」

「ラーメン屋さん? 行ったことない」

「じゃあ、さーちゃんのラーメン屋初体験と行きますか」

「楽しみ」

わくわくと心弾ませながら、大ちゃんについて行く。手を繋いだまま歩くと、大ちゃんとの絆が感じられるみたいで嬉しい。さっきまでのどんよりとした気持ちが、さあっと晴れていくみたい。

この手を離したくないなと思ったけれど、あっという間にラーメン屋に着いてしまった。残念だなんて思ってしまう私は、重症かもしれない。

醤油ベースのお出汁のいい香りに、私のお腹がぐうっと鳴った。

「お腹すいたね」

「聞こえちゃった?」

「うん、食べる準備バッチリじゃん」

「恥ずかしい」

「あはは。生きてる証拠」

大ちゃんはからかうわけでもなく、何でもないように流してくれる。ありのままを受け入れてくれる、そんなところも胸がキュンと疼いた。

この店一番人気のチャーシュー麺を頼んだら、麺が見えないくらいにチャーシューが敷き詰められていて、あまりの迫力に丼を前にして固まった。

「どうしたの、さーちゃん」

「どうやって食べたらいいのかと思って」

「ふっ、なにそれ。好きに食べていいんだよ」

「うん……熱っ!」

「大丈夫?」

「舌やけどした……」

笑いながら甲斐甲斐しくお水を渡してくれる大ちゃん。醜態を晒して何だか恥ずかしい。私ったら、ラーメンすらまともに食べられないなんて。

ふと、実花さんともこうしてデートしたのかな、なんて想像してしまった。

あー、なんで今そんなこと考えちゃったんだろう。せっかく頭の中からいなくなってたのに。思い出したらまたモヤモヤが戻ってきてしまうじゃないか。