一夜のあと、君に溺れる

映画はまだ始まらず、場内は明るい。大画面にはいろいろな企業のCМが流れ、その間にぞろぞろと人も入ってくる。

指定された座席に座ると、大ちゃんが再び「ごめん」とこちらを向いた。

「さっきの?」

「うん。実花は半年前に別れた彼女なんだ」

「元カノ……」

「そうなんだけど。別に今は何でもないから。ばったり出会っただけで」

「また連絡するって言ってたよ?」

「やり直したいって言われた」

「へぇ……」

「いや、でも俺は全然その気はないから。だから誤解しないでほしい」

「うん……わかった……」

頷いてみたものの、どこか不安が拭えない。大ちゃんを疑っているわけじゃないのに、なぜだかモヤモヤとしたものが頭の中を渦巻いて、離れない。

実花さん、可愛かったな……。大ちゃんって、ああいう可愛い子がタイプなのかな。私とは全然違う……。

場内が暗くなり、映画が始まった。ホラー映画らしく、映像も音響もおどろおどろしい。そんな効果音が、今の私にはズドンと胸に響く。

どうしよう、映画の内容が頭に入ってこない。心がざわついてどうしようもない。大ちゃんは私のことを好きって言ってくれているのに、それが信じられないでいる。実花さんとよりを戻すんじゃないかって、そればかり考えてしまう。

だってしょせん私はワンナイトの相手ってだけで、それも私からお願いしたわがままな相手だもの。大ちゃんは真面目だから、割り切った関係ができない。だから私のことを好きになろうとしてくれているのよね。努力してくれているのよね。

ずっと、そんなことを考えていた。

いつの間にか映画が終わり、場内が明るくなった。まわりが一斉に席を立ち始め、ぞろぞろと出口に向かう。ホラー映画より自分の考えの方がずっとホラーだった。何だか泣けてくる。