一夜のあと、君に溺れる

映画館は平日の昼間だというのに結構な人で賑わっていた。大ちゃんがもらったというペアチケットを窓口で引き換え、時間までグッズを見たりして過ごす。

特に買いたい物があるわけじゃないけれど、大ちゃんと一緒に手に取って意見を交わして……と、そんな何でもないことが嬉しかったりする。

好きを自覚するってすごい。見えていた世界がまるで違うものに変わってしまったかのようだ。

今まで、お見合いした相手を頑張って好きになろうとしていた。頑張って好きになるってどういうことだろう。今思えば、そんな気持ちは相手の人に失礼だったかもしれない。だからこそ、私はお見合いが上手くいかなかったんだろう。

そんなことをぼんやり思いつつ、映画が始まる前に御手洗いに行く。鏡を見ながらカラーリップを塗り直し、念入りに身だしなみを整えた。

御手洗いから戻ると、大ちゃんの前には女性が立っていた。何か話をしている様子に、ザワッと心が騒ぎ出す。何だろう、この感じ。

「……大ちゃん?」

「あ……」

バツの悪そうな顔に、嫌な予感がした。一緒にいる女性はとても可愛らしい容姿だけれど、私に気づくと眉根を寄せる。まるで邪魔しないでと言わんばかりに。

「誰、この人?」

実花(みか)には関係ない。邪魔しないでくれ。行こう、さーちゃん」

「えっ、ええ……?」

大ちゃんに背を押されて、歩を進める。いいのかしらと思いつつも、大ちゃんがスタスタ歩いて行くから、それに従うしかない。

「大ちゃん! また連絡するから!」

実花さんが叫んでいたけれど、大ちゃんは振り向かない。逆に私の方が気になって振り向いたけれど、実花さんは私を一睨みして逆方向へ去って行った。

……睨まれるようなことしたかしら?

じっと大ちゃんを見ると、「ごめん」と小さく呟く。何がごめんなのかわからないけれど、実花さんと大ちゃんは親密な関係だったのかなって、いくら鈍感な私でもなんとなく雰囲気で察した。