一夜のあと、君に溺れる

「桜子さんは何て呼ばれたいの?」

「えっ? あ、えっと……桜子さんと桜子以外で」

「さーちゃん? さっこ?」

「……さーちゃんがいいかも。大ちゃんとお揃いみたい」

「何その理由。可愛いんですけど」

ボボッと顔が赤くなった気がする。大ちゃんが運転中でよかった。この顔は見られたくないもの。慌てて両手で頬を押さえて、手のひらで熱を吸収する。

何これ、もうやだ。私、絶対大ちゃんのこと、好きになってる。好きになるって、そういうことなのよね、きっと。だってこんなにも胸がキュンキュンして、どうしようもなくなってるんだもの。

女子会をしてからずっと考えていた。人を好きになるってどういうことなんだろうって。杏子さんがそんなに悩むことないって言ってたけど、その通りだったみたい。

あー、でも今から映画に行くのに、今そのことに気づいちゃうだなんて、神様の意地悪。変に緊張して落ち着かなくなるじゃないの。

どうしよう。
好きって気持ち、やばい。
語彙力なくなるくらい、やばい。
むしろ、やばいしか言えない。

「……やばい」

「ん? どうかした?」

「大ちゃん、これってデート?」

「二人で出かけるし、デートじゃない?」

「デートなんだ……」

「えっ、ごめん、ダメだった?」

「えっ、ちがっ、ダメじゃないよ! デートがいいよ!」

なぜか一生懸命叫んでしまった。大ちゃんはキョトンとした後、くすっと笑う。

「さーちゃんってほんっと、可愛いよね」

「〜〜〜!!!!」

まさか、声にならない悲鳴を上げるなんて……。
ドッドッと心臓がバクバクしている。「さーちゃん」の破壊力、エグい。嬉しいし恥ずかしいし、顔から湯気が出そう。

「名前……」

「うん?」

「さーちゃんってやばい」

「え? やばい?」

「ドキドキして死んじゃうかも」

「ドキドキさせてるんだよ、さーちゃん」

「〜〜〜!!!!」

どうしようもなくなって、私は両手で顔を覆った。

なんなのこれ。
私、絶対変な子だわ。