一夜のあと、君に溺れる

何を着ていこうか迷うなんて、初めてかもしれない。しかも迷っているのは、どの服を着たら大ちゃんに可愛いって思ってもらえるだろうか……なんてことなんだから。

私ったら、どれだけ大ちゃんのこと意識しているんだろう。それを思うと、大ちゃんのことが好きなのかもしれないなんて、考えてしまう。女子会でもみんなに指摘されてしまったし。

「……好き、なのかな?」

心に問いかけてみるけれど、この気持ちイコール好きなのだと、自信が持てない。そんなこんなで時間だけが刻々と過ぎ、結局いつも通りの何の変哲もない服で出かけることになってしまった。

車で迎えに来てくれた大ちゃんは、いつも以上に大人っぽく見えて、ドキンと心臓が跳ねる。助手席に座り、シートベルトを締めたのをちゃんと確認してから、ゆっくりと車が発進した。

「映画のチケットをもらったんだけど、内容がホラーだったんですよ。苦手だったら別のを観ましょうか?」

「ううん、ホラー映画、大画面で観てみたい」

「怖いの大丈夫?」

「うーん、あまり観たことはないけど、たぶん大丈夫だと思うの。怖いより、観てみたいって好奇心の方が勝ってる」

「ははっ、桜子さんらしいね」

クスクスと笑う大ちゃんの横顔を見て、なぜだか胸がキュンとなる。大ちゃんのことを一人占めしたいなんて、そんな気持ちさえ湧き上がる。

これってやっぱり好きってこと?

「ねえ、大ちゃん」

「うん、なに?」

「私のこと、さん付けじゃなくて、他の呼び方にしてほしい」

ちらりとこちらを見た大ちゃんは、うーんと首を傾げながらまた前を向いた。お願いを投げかけたことで、合法的に大ちゃんを見つめることができる。

やばい、変にドキドキしてきた。あれ、おかしい。なんでこんなにドキドキするんだろう。