一夜のあと、君に溺れる

【今度映画観に行きませんか?チケットもらったので】

最近映画を観に行ってないなと思いつつ、次にお互い休みが合うのはいつだろうかと考える。大ちゃんも私もシフト制だから、示し合わせないと休みが被らない。でも、また会えるんだと思ったら、ふっと笑みがこぼれた。

「桜子さん、もしかして例の彼から連絡ですか?」

「えっ? ええ、まあ……」

「桜子さんのオーラがピンク色」

「もう好きじゃん、絶対それ好きじゃん」

「え、なんで?」

「もー、自分が今どれだけ幸せそうな顔してると思ってるんですか」

「えっ、そんな顔してた?」

「あー、ついにお一人様が私だけになるぅ」

「千里ちゃん、食べよう。食べて紛らわそう」

千里ちゃんが嘆き、杏子さんが取り皿に料理をてんこ盛りに分け始めた。心和ちゃんは両手を頬に当てながら、「いいないいなー」と羨ましがっている。

そんな羨ましがらなくたって、心和ちゃんは佐々木先生とラブラブだし、杏子さんなんてちょっと前に結婚したばかり。千里ちゃんはなんだかんだ言いながら、すぐに彼氏ができるタイプ。私だけがポンコツ路線を歩んでいる。

「私、頑張る」

「何の宣言ですか、それ」

「もー、今日は前祝いってとこだね」

「桜子さんに乾杯ー!」

コッチンとグラスをぶつける。私のモヤモヤした気持ちを聞いてもらう会だったはずなのに、勝手に前祝いにされてしまった。まだ、大ちゃんと付き合うって決まったわけじゃないのに。それに、やっぱり好きって気持ちがよくわからない。

「たぶんね、そんなに悩むことないと思うよ」

「どうして?」

「だって、好きって気持ちが溢れたら、勝手に好きって言葉が出ちゃうから」

「あっ、それわかりますぅ。私も佐々木先生の顔見ただけで好きって言っちゃいます」

「まー、その言い分はわかるけど、お一人様の私は涙目でーす」

あははと明るい声が店内に響いた。