一夜のあと、君に溺れる

「それで、その人と何かあったの?」

「えっと、告白されて……」

「キャー!」

「ぐはっ、桜子さんの卒業が近い。お一人様で取り残される」

心和ちゃんは頬をピンクに染めながら興奮し、千里ちゃんはガックリ肩を落とした。

「違うの違うの、聞いて」

「はい、聞きますとも」

「私、男性を好きになったことないの」

「えっ、もしかしてLGBT的な?」

「いや、そうじゃなくて。えっと、なんて言ったらいいのかしら? 好きってどういうことなのか、知りたいっていうか。どういう気持ちになったら、好きってことなの?」

「「「えええええーーーーーーーー」」」

三人の声がハモり、動きが止まった。
私、変なこと言っちゃったかしら……?

店員さんが料理を運んでくる。テーブルの上には色とりどりの韓国料理が所狭しと並べられていく。いつも取り分けてくれる杏子さんですら、動かずにうーんと考えている。どうやら私はよっぽど変なことを口走ってしまったらしい。

でも私は知りたい。人を好きになるってどんなことなのか。お見合いで何人もの男性と出会ってきたし、好きになろう、好きになってもらおうと努力もしてきた。だけど何ひとつ上手くいかなかった。

だからわからないのだ。好きって気持ちがどんな気持ちなのか。目の前のチャプチェをパクリと食べて美味しいと感じる。美味しいからチャプチェが好きとは限らない。美味しいイコール好きではない。

じゃあ、好きって一体何なの?

「なんか……桜子さんって……」

「拗らせてる系?」

「ブイブイ言わせてると思ってたのに」

「杏子さん、ブイブイって言葉古くないですか?」

「えっ、今は何ていうの? イケイケ?」

「どんな男性でも手玉に取りそうなのに」

「いや、相手は取られてるでしょ。桜子さんが鈍感なだけじゃん」

「私、鈍感なの?」

「「「鈍感でしょ」」」

また、三人の声がハモった。
おかしい、自分ではそんなことないと思っているのに。