一夜のあと、君に溺れる

恥ずかしさを紛らわすためにアイスをパクパク食べた。3つのフレーバーはどれも美味しくて、幸せな味だ。二人でシェアして食べるっていうのも、特別感があっていい。

「ねえ大ちゃん、今日すっごく楽しかった。いろいろ教えてくれてありがとう」

「俺も楽しかったですよ」

「またどこか行かない?」

「いいですね。じゃあまた次の休みに」

ニコッと承諾してくれる大ちゃんの笑顔が眩しい。大ちゃんと一緒にいると楽しいし心が穏やかになる。どうしてだろう。それに、またどこかへ行こうだなんて、自分から誘ってしまった。こんなこと、初めてかも。

「大ちゃん、私、変じゃない?」

「変とは?」

「なんか、いつもの私と違うみたいな」

「んー、いつもより可愛いです」

「や、そういうことじゃなくて」

「じゃあどういうこと?」

「わからない」

「ん? 体調でも悪い?」

「悪くないと思うけど」

私のおでこに大ちゃんの手が当てられる。大きな手のひらに包まれて、胸がきゅんと疼く。

「熱はなさそうだけど、ちょっと顔が赤いですね。明日は仕事でしょ? 早く帰って寝ましょう」

「そうね、そうするわ。きっと初サイゼリヤと初ゲームセンターではしゃぎすぎたのよ」

うん、きっとそう。だって、どちらもずっと憧れていたの。憧れを一気に経験しすぎて、頭がオーバーヒートしているに違いない。そう思うと、私の頭って案外キャパが小さいのね。

大ちゃんが私の右手をすっと握った。え、と思って大ちゃんを見上げる。

「だって今日も恋人でしょ」

「うん、そうだったね」

嬉しいような照れくさいような、変な気持ち。だって今までこんな風にデートをしたことがなかったから。だから、私の中の好奇心が、物珍しく感じているのだろうか。

最寄り駅について、手を離すのが寂しく感じてしまう。離して、バイバイって手を振るだけなのに。たったそれだけのことなのに。どうしてこんなにも離れ難くなっているんだろう。

「桜子さん、俺、ちゃんと言ってなかった気がするんですよね」

「なあに?」

「俺、桜子さんのこと好きです」

「……」

「じゃあまた、連絡しますね」

「う、うん……」

かろうじて頷いた。
去っていく大ちゃんの後ろ姿を見つめながら、心臓が激しく音を立てる。そんな風に言い逃げするなんて、大ちゃんはずるい。