一夜のあと、君に溺れる

お見合いは慣れたものだ。我が御堂(みどう)家は、代々、神木坂(かみきざか)総合病院の理事長を歴任している。神木坂といえば、御堂グループの傘下にある複数の中核企業から成る、日本を代表する大企業群のひとつだ。ちなみに御堂グループは、旧財閥をルーツに持つ格式高い企業集団である。

その中でも序列があり、神木坂総合病院はグループ設立初期に開設された、御堂直営の大病院だ。そんな家に生まれた私は、子どもの頃から優秀な医師と結婚するよう躾けられてきた。私は一人娘だから、父はそうやって御堂家の世襲を守ろうとしているのだ。

そんな父の教えに歯向かうこともなく、与えられたお見合いにはすべて参加してきた。相手を好きになろうと努力もした。

でも、上手くいかない。いつも、お断りされてしまう。私の何がダメなんだろう。

なーんて、そんなネガティブな感情に苛まれるのは、目の前の結婚式が、あまりにも幸せで溢れていて眩しすぎるからだろうか。

清々しい青空。自然溢れた隠れ家のような場所に建つ、おしゃれなチャペル。「おめでとう」とそこかしこから、声が掛かる。出席者の誰もが笑顔で、今日この日を待ち望んでいたかのよう。

お友達の杏子(あんこ)さんと、神木坂総合病院の医師である清島先生との結婚式に出席した私は、お二人の幸せオーラを浴びすぎて灰になりかけていた。

眩しい。眩しすぎる。

「杏子さん、きれーい」

目をキラキラさせながら憧れの眼差しを向けるのは、神木坂総合病院に勤める看護師の心和(ここな)ちゃん。

「こう見ると清島先生って、やっぱりイケメンなんだねぇ。てか、清島先生のお友達、イケメン揃いで目が潤う」

ちゃっかりと人間観察しているのは、同じく看護師の千里(ちさと)ちゃん。私も同じ神木坂総合病院で看護師をしている。

「桜子さん、ブーケトスですって」

「行きましょうよ。私たちお一人様だから何としても取らないと」

「確かに、そうね」

私たちは嬉々としてブーケトスに参加した。杏子さんが後ろを向き、「いきまーす」と笑顔を向ける。私たちはそのブーケの行方をしっかりと目で追い、ぐっと手を伸ばした。

私の目の前に飛んできたと思ったのに、そこかしこから手が伸び、ブーケは人の手をポンポンと弾み、最終的に心和ちゃんの手の中に収まった。

「ふわぁ〜! ブーケ取っちゃったぁ!」

心和ちゃんが目をキラキラさせる。私と千里ちゃんは「次は心和ちゃんかぁ、わかる」とうんうんと頷いた。なぜなら心和ちゃんは、小児科の医師である佐々木先生とお付き合いしているからだ。

私と千里ちゃんは、絶賛お一人様まっしぐら。彼氏なんて全然できない。ううん、千里ちゃんはたぶんいろいろ経験があると思う。でも私は、誰よりもお見合いをこなしているだけで、男性とまともにお付き合いしたことはないのだ。