一夜のあと、君に溺れる

あれ? 何だろう? ドキドキ心臓がうるさい。だって別に、何があったわけでもない。むしろここに来るまで手を繋いだり、なんなら昨晩はワンナイトしちゃってる関係だし、今日も恋人の延長だって、そういう設定で……。

「ほら見て、桜子さん!」

「え? あっ!」

アームはぬいぐるみを持ち上げて、さっきと同じようにアームが揺れてポロリと落とす。けれど場所が良かったのか、出口の縁にいい角度でぶつかって、コロンと落ちた。

「わあー! うそー?!」

「やったじゃん」

「嬉しい!」

取り出し口からぬいぐるみを取り出す。胸に抱えられるくらいの、大きなふわふわのぬいぐるみ。

「200円で取れちゃった」

「ビギナーズラックですね」

「大ちゃんが教えてくれたからだよ」

「あー、喜んでる桜子さんって、ほんと可愛いですね」

「えっ、あっ、ありがとう」

「照れてる」

「だって……。可愛いは言われ慣れてないもの」

「他の人に言われないでくださいね。俺だけが可愛いって言いますから」

「えっ、ええっ?!」

心配しなくても、私のことを可愛いだなんて言ってくれるのは、大ちゃんしかいない。ずっと、可愛いって言われたいと思ってたのに、いざ言われると恥ずかしいし、本当にそう思ってるのか疑ったりして。お世辞……なのかしら?

「次、バスケ勝負しません?」

「バスケ?」

言われるがままついていくと、バスケットゴールが1つずつ仕切られていくつか並んでいる。制限時間内に何回ゴールを決められるか勝負ができるらしい。

「負けたほうがサーティワンのアイス奢りですよ」

「絶対負けないわ」

コインを入れると、自分のブースにバスケットボールが3個転がってくる。ゴールに向かって投げると、ガシャーンと派手な音を立てながら外れたボールがまたこちらに転がってきた。

隣の大ちゃんは、ゴールを決めたらしく、ジャジャーンと軽快なメロディーが流れている。くっ、負けられない。サーティワンのアイス、奢ってもらうわ。