一夜のあと、君に溺れる

サイゼリヤといったらミラノ風ドリアだと大ちゃんが言うので、それを注文した。ミーハーな私としてはぜひとも経験したい一品。大ちゃんはオニオンソースのハンバーグだ。

運ばれてきた料理はどれも普通サイズで、しっかり湯気も立ちのぼり、とても美味しそうな香りが漂う。

「ねえ、大ちゃん、今のところサイゼリヤの何がダメなのかわからないんだけど」

「うん? 初デートでサイゼリヤの話だっけ?」

「そうそう」

「それってサイゼリヤがどうこうじゃなくて、価値観の違いでしょ。例えば、サイゼリヤのリーズナブルな価格が、初デートに相応しくないと思っているとか、初デートなんだから普段行かないようなおしゃれなレストランを選んでほしいとか、そんな感じ」

「価値観かぁ」

「桜子さんはサイゼリヤに来たかったんだから、それでいいじゃないですか。どうですか、初サイゼリヤは」

「すごくテンション上がってる!」

「俺は桜子さんの楽しそうな姿が見られて満足ですよ。ドリアひとくちもらってもいいです?」

「あ、うん、いいよ」

大ちゃんは新しいスプーンでドリアをひとすくいして口へ運ぶ。「やっぱ美味いですね」とモグモグしながら、ハンバーグを一切れ、私のお皿に乗せてくれた。

「ありがとう」

「美味いでしょ」

「うん、美味しい。もしかしてどれ食べても当たりなのかしら?」

「メニュー全制覇してみたいですね」

「じゃあまた来ましょうよ」

そう言ったら、大ちゃんがキョトンとする。
あれ? これって私、大ちゃんのこと誘ってる? 変なこと言っちゃったかしら?

慌てて何か繕おうと思ったのに、大ちゃんはくしゃっと柔らかく笑って、「ぜひまた来ましょう」と嬉しそうに私を見つめた。

ドッキンと心臓が跳ねる。
大ちゃんって、表情によってかっこよかったり可愛かったりする。とっても不思議な人だ。一緒にいると、安心するし楽しいし、そして時々胸がキュンとなる。