一夜のあと、君に溺れる

「恋人の延長なので」

「恋人ってやっぱり手を繋ぐもの?」

「俺は繋ぎたい派ですね」

「じゃあ恋人繋ぎもやってみたい」

リクエストしたら、パッと手を開いて指を交互に入れる。絡まる指がすごく強固な感じがして、二人の関係を深くしているみたいだけれど、どちらかというと普通に繋いだほうが密着感はあると思う。

「大ちゃんはどっちが好き?」

「好きな人に触れらるなら、どちらでもいいですね」

「そういうものなのかしら?」

「桜子さんはどう思うの?」

「寒い日は温かくていいわよね」

「そこはドキドキしてほしかったですけどね。存分に暖を取ってください」

大ちゃんはクスクス笑いながら、手を握り直した。別に今日は寒くないけれど、きゅっと握ってくれるのは嬉しいと感じる。大ちゃんの手は私よりも大きいし、指が長くて綺麗だ。この手が、昨晩私を翻弄しまくった。

……なんて、不埓な思い出が頭をよぎって、カアアッと体が熱くなる。今まで男性経験がないわけじゃないけれど、とてもご無沙汰だったし、何より大ちゃんがすっごく優しかった。あんな風に包まれるように抱かれたのなんて初めてで……。

って、私ったら、思い出しすぎだわ。もうやだ、落ち着こう。そうよ、今から念願のサイゼリヤなんだから。

店内には運良くすぐに入ることができたけれど、お昼時だからかとても混んでいて、ザワザワと賑やかだ。

「何食べます?」

「そうね、どうしようかしら」

メニューをペラリと開いて、そのリーズナブルなお値段に釘付けになった。まさか、ミニサイズなのかしら……と思って周りを見るけれど、普通サイズの料理が運ばれている。

「大ちゃん、これって日本円よね?」

「ここ日本なので」

「どうしてこんなにリーズナブルなのかしら」

「気に入らない?」

「ううん。感動してる」

初デートでサイゼリヤはあり得ないとは、どういうことだろう。私はすでに感動しているのに。もしかして味がいまいちなのかしら。うーん。