一夜のあと、君に溺れる

「面白いなんて初めて言われた。嬉しい」

「嬉しいの? ほんと面白いし可愛いよね」

「やっぱりそんなこと言ってくれるの、大ちゃんだけだと思うの」

「じゃあ俺は桜子さんの特別ってことで」

なんだか、照れてしまう。本当に、大ちゃんは私にとって特別な人。だって私のわがままな願い事を、次から次へ叶えてくれるんだもの。

同性の友達には自分の理想や夢を語れるけれど、異性には言ったことがなかった。今までこんなあけすけな事を言えるような仲のいい異性なんていなかったし、ましてやお見合いで言おうものなら即お断りされると思う。

「大ちゃんって良い人ね」

「あー、気づいちゃいましたか。溢れ出る良い人オーラを」

「おこぼれにあずかります」

「どうぞどうぞ」

ふふっと笑ったら、顎をくっと持ち上げられて唇に感じる柔らかな感触。優しい触れるだけのキス。だけど、そのシチュエーションにドッキンと心臓が跳ねる。

「……ワンナイトのおまけです」

「キュン死するかと思った」

「本気で桜子さんのこと落としたいって言ったでしょ」

「私が大ちゃんのこと好きになるってことだよね?」

「そう。待ってますので、よろしく」

ニコッと笑った大ちゃんは、何事もなかったかのようにベッドから出て着替えを始める。そんな姿を眺めながら、ドキンドキンと鼓動が速くなっていくのを感じていた。

人を好きになるってどういうことかわからない。今のこの感情がどういうものなのかもよくわからない。ただ、いつもとはどこか違うドキドキが、体を巡っていることだけは確か。

「どうかしました?」

「……ううん。お腹すいたなって」

「何か食べます? ルームサービス取ってもいいし、どこか食べに行ってもいいし」

「どちらでも……あ、リクエストしてもいいの?」

「いいですよ?」

「サイゼリヤに行きたい」

「……あははっ!」

また大ちゃんはお腹を抱えて笑う。笑われている意味がわからなくて首を傾げると、「その答えは予想外」と楽しそうに笑った。大ちゃんが笑ってくれると何だか幸せな気持ちになって、私も自然と笑顔になった。