一夜のあと、君に溺れる

お詫びに来たのに、しっかり夕飯をいただき、たくさんおしゃべりをして、帰る頃にはホクホク顔になっていた。そんな私を見て、大ちゃんがくすりと笑う。

「今日もさーちゃんの笑顔が見られて嬉しい」

「私ね、大ちゃんとお付き合いしてから、幸せでいっぱいなの。大ちゃんと一緒にいると、満たされるというか、気持ちが溢れてしまうというか……」

「そっか」

「だから、ありがとう」

素直な気持ちを口にしたら、ぐいっと肩を引き寄せられて、大ちゃんの胸の中にぽすんと収まった。包み込んでくれるように抱きしめる、大ちゃんの力加減がとても心地いい。大ちゃんの胸の中はあったかくて、陽だまりのような香りがする。

「ほんとにもう、すぐそういう可愛いことを言う」

「うん?」

「このままどこかに連れ去りたいくらい、俺はさーちゃんのことが好きだよ」

「じゃあ、連れ去って」

ぎゅっと、大ちゃんの胸元のシャツを握る。その手に、大ちゃんの大きな手がそっと重ねられた。もたげている頭から、大ちゃんの心臓の音が伝わってくる。トクントクンと、落ち着いた優しい音。

「連れ去る代わりに、俺の奥さんになってくれる?」

甘さを含んだ声音が耳の奥にそっと染み込んで、鼓膜をゆるりと震わす。胸の奥がじわっと熱くなるのを感じた。

顔を上げると、とんでもなく甘い顔をした大ちゃんに見つめられていた。夜の灯りを映したその綺麗な瞳に、吸い込まれそう。

「嬉しい」

言葉が溢れるのと同時に、ぐっと手を伸ばして、大ちゃんの首に手を回す。近づく距離感に胸をときめかせながら、甘くて蕩けるような口づけを交わした。

ああ、愛おしい――

まるで世界は二人だけのものみたいに、音もなく静か。甘い吐息だけがこぼれ落ちる。

それはとんでもなく幸せで心満たされて、このまま二人、夜の闇に溶け込んでいきそうだった。


【END】