逃げるように家に帰った後、机の上にあるせんべいをかじりながら新しく作る楽曲について考えていた。
メロディと伴奏まで作った。だから、使う音声を決めようと思っていてたのだ。
初音ミク、flower、鏡音リン・レン、いっそのことずんだもんなども使ってみようか。なんてことを考えようと思っていたのに、出てくるのはあの、立花詠の声だけだった。
「なんでだよ…」
俺の専門は機械音声だ。人間の声については門外漢。歌いやすさとか、調とかそういうものは全部無視して作ってきた。いくら立花の声で曲を作りたいと思ったとて(思いたくもないが)、できるわけないのだ。不可能だ。
でも。
できるんじゃないか、と思ってしまう。
彼女が歌っていた「白々しいけど」は本当に初音ミクの歌い方とマッチしていた。そこら辺の歌ってみたとは違かった。
「嫌だ」
嫌だ嫌だ嫌だ。
アイデンティティが壊れてしまったような感覚。きっとこれ、周りに人が居たらもっと自己嫌悪に陥るはずだ。
作る権利、悩む権利、存在意義まで否定されてしまうような感覚。
嗚呼何なんだこの気持ちは。
機械で作ることが、俺にとっては正解なんだ。合成音声キャラクターの歌のレパートリーを増やしていくことが。キャラクター地震に感情はないし、喜んでいるのかすらわからないけれど、それでも。初音ミクのことが嫌いな人もいるだろうし、好きな人もいる。俺は好きな人と自分のために曲を作っている、合成音声の曲のレパートリーを無限にしていくプロデューサーの一人だ。それに誇りを持っているから、人間が完コピできないようにしていた。調を壊して、リズムを変えて。
だから、歌いやすいところだけを切り取ったショート動画の歌ってみたばかりだった。それを蔑んで、笑って。
それなのに。
あいつが歌ってみたフルバージョンを作ってしまった。
おかしい。何かがおかしい。
あいつの声が耳から離れなくて、それは初音ミクの曲を初めて聴いた時の感覚と同じで、それと同じことが人間の声で起こっていることが不服だった。できることなら、自分の脳に申し出たい。
もしかして、あいつは天才なんだろうか。
そんな考えがよぎった。
発声方法、強弱のつけ方、リズムや音程の取り方、発音方法だって、全部学生…いや人間の域を越していた。
彼女は、自分で変えていた。
例えば、二番のBメロディの終りのところ。あの力強さのあと、急に悲しいような切ないような白鳥のような歌い方をしてきた。
アカペラなのに。伴奏なんかついていないのに。
普通、あれはゆっくりとグラデーションのように変わっていくはずなんだ。
それなのに、どうしてあんな急に声を変えることが出来るのだろうか。
疑問なんてたくさん浮かんでくる。
機械じゃない。本当の人の声をあんなにしっかり聞いたことなどなかった。
まるで溺れてるみたいで。あの歌声で湧き出た疑問の嵐が、雨を降らせている感じ。
辛い、なんて言えない。
怖い、が正解だと思う。
だから。
スマホを取り出して、自分を忘れるようにメッセージを打ち込んだ。
怖い。
この怖さを解消するためには、これしかないんだ。
メロディと伴奏まで作った。だから、使う音声を決めようと思っていてたのだ。
初音ミク、flower、鏡音リン・レン、いっそのことずんだもんなども使ってみようか。なんてことを考えようと思っていたのに、出てくるのはあの、立花詠の声だけだった。
「なんでだよ…」
俺の専門は機械音声だ。人間の声については門外漢。歌いやすさとか、調とかそういうものは全部無視して作ってきた。いくら立花の声で曲を作りたいと思ったとて(思いたくもないが)、できるわけないのだ。不可能だ。
でも。
できるんじゃないか、と思ってしまう。
彼女が歌っていた「白々しいけど」は本当に初音ミクの歌い方とマッチしていた。そこら辺の歌ってみたとは違かった。
「嫌だ」
嫌だ嫌だ嫌だ。
アイデンティティが壊れてしまったような感覚。きっとこれ、周りに人が居たらもっと自己嫌悪に陥るはずだ。
作る権利、悩む権利、存在意義まで否定されてしまうような感覚。
嗚呼何なんだこの気持ちは。
機械で作ることが、俺にとっては正解なんだ。合成音声キャラクターの歌のレパートリーを増やしていくことが。キャラクター地震に感情はないし、喜んでいるのかすらわからないけれど、それでも。初音ミクのことが嫌いな人もいるだろうし、好きな人もいる。俺は好きな人と自分のために曲を作っている、合成音声の曲のレパートリーを無限にしていくプロデューサーの一人だ。それに誇りを持っているから、人間が完コピできないようにしていた。調を壊して、リズムを変えて。
だから、歌いやすいところだけを切り取ったショート動画の歌ってみたばかりだった。それを蔑んで、笑って。
それなのに。
あいつが歌ってみたフルバージョンを作ってしまった。
おかしい。何かがおかしい。
あいつの声が耳から離れなくて、それは初音ミクの曲を初めて聴いた時の感覚と同じで、それと同じことが人間の声で起こっていることが不服だった。できることなら、自分の脳に申し出たい。
もしかして、あいつは天才なんだろうか。
そんな考えがよぎった。
発声方法、強弱のつけ方、リズムや音程の取り方、発音方法だって、全部学生…いや人間の域を越していた。
彼女は、自分で変えていた。
例えば、二番のBメロディの終りのところ。あの力強さのあと、急に悲しいような切ないような白鳥のような歌い方をしてきた。
アカペラなのに。伴奏なんかついていないのに。
普通、あれはゆっくりとグラデーションのように変わっていくはずなんだ。
それなのに、どうしてあんな急に声を変えることが出来るのだろうか。
疑問なんてたくさん浮かんでくる。
機械じゃない。本当の人の声をあんなにしっかり聞いたことなどなかった。
まるで溺れてるみたいで。あの歌声で湧き出た疑問の嵐が、雨を降らせている感じ。
辛い、なんて言えない。
怖い、が正解だと思う。
だから。
スマホを取り出して、自分を忘れるようにメッセージを打ち込んだ。
怖い。
この怖さを解消するためには、これしかないんだ。
