殺し屋のご飯

 わたしたちは、大きな廃墟の前に立っていた。

 わたしと深月が来た頃には日野くんがいて、右手で大きく手を振ってくれた。

 「うわぁ、大きいですねぇ、先輩!」

 深月が、日野くんを睨む。

 先輩って言っているのは、違和感があるけれど、そこまで嫌だったかなぁ……。

 「ごめんなさいぃぃっ」

 日野くんが謝ったにも関わらず、深月はまだ日野くんを見定めるように、目を細めた。

 「いくよ、日野くん」

 棘の残った声。

 「じゃあ、これからは別行動ね!夜九時までにここ集合ね。インカムもよろしく」

 これ以上二人の仲にヒビが入らないようにゆっくり言った。

 わたしたちは、建物に入り、別方向へと歩き出した。


 一人って心細いなぁ。

 わたしは銃をいつでも撃てるよう、持ちながら埃がまわないように歩く。

 窓から入った光に、埃が照らされてキラキラと輪郭がわかる。

 ……人がいない。いや、人の気配すらしない。
 ……もう、情報が漏れていた?
 嫌な予感がした。

 いろんなところを探る。

 廃墟は薄暗く気味が悪い。

 咽せるほどの埃に、時々音を立てていく虫。
 その全てが肌をなぞる。
 嫌な気配に鳥肌が立つ。

 一時間ほど経っても、秘密文書は見つかることはなかった。

 一人でいると、不安になってくる。

 相棒といないってこんな辛いことなんだね……。
 そう思ったとき、彼の声が聞こえた。

 『秘密文書、見つかったか?俺の方は見つかってねぇ』

 「わたしの方も、まだ。なんか、人がいなさすぎて悪い予感がするんだけど」

 『あぁ、俺もそう思う。あと、ひ――』

 声が止まったあと、一気に口から息の抜ける音がした。

 咳き込む音。

 ドサっと倒れる音も。

 ピー

 そしてインカムが壊れた音がする。

 「……深月っ!」
 
 やばいっ、やばいやばいやばい!

 深月をあそこまで一瞬で、日野くんの目を掻い潜ってできる人なんてほぼいないはず。

 めちゃくちゃ強い人が、隠れてる。
 それは確かだった。

 わたしの脳は、もう、限界を達しそうだった。

 残念ながら、頭脳は担当外。
 いつも、深月の担当だった。
 
 でも、頭を使え、頭を。

 頭の中の違和感が、拭いきれない。

 でもわたしは、ばかだから。
 
 
 一通り考えて、
 「ああぁぁぁぁっ!やっぱ無理!身体を張るしかなぁぁぁいっ!」
 結論に至った。

 そしてわたしは初めて、勉強をサボり続けた過去のわたしを憎んだ。