殺し屋のご飯

   〜一夜side〜
 物が掠れる音がした。

 わたしの音じゃない。

 多分、二つ隣の部屋から。

 急いで走って向かう。

 扉を開けると、よく知らない人と深月がいた。
 戦っている。

 一瞬の沈黙ののち、二人がこっちを見て気まずい。

 「逃げろっ。こいつが、日野とすり替わってたんだ!」

 深月の声が沈黙の中に響く。

 そう言った、深月は傷だらけだった。

 いろんなところから血が出ている。

 「はぁっ?ちょっ、ちょっと待って⁉︎素手で戦ってたの⁉︎」

 刃がわたしに向かって飛ぶ。
 わたしは、少し反って避ける。

 「取り込み中!攻撃なしでっ!」

 右目に傷がある子を睨んだ。

 わたしは、あの子を知っている気がする。
 するとその男の子は拗ねたように言った。

 「……やだ。というかすごいねぇ。すごく集中して話してるからいけるかなって思ったけど……」

 わたしはそれをガン無視する。

 「深月は、とりあえず休憩で。帰って。わたし一人でできるから」

 「嫌に決まってんだろ?ばか」

 「なんで二人から批判されんの?わたし」

 ちらっと、横を向く。

 よかった。

 可愛い系男子くんは、今は攻撃しようと……

 「深月っ!右に避けてっ!」

 彼は右に素早く移動すると、その綺麗な髪の毛が揺れた。

 床に、銃弾が落ちていた。

 「銃、か」

 「そうっ!深月さんっ、よく気がついたね」

 「お前に褒められても嬉しくない」

 「即答⁉︎悲しいなぁ」

 二人がそんな会話をしている。

 わたしの、記憶が溢れる。

 思い出してしまった。

 彼が……違う。

 夜雨が、わたしの大切な大切な家族を、
 奪ったということを。

 もう、負けないよ。

 父さん。

 瞳を閉じる。

 一回、少し埃の混じった空気を、吸って、吐く。

 目を開く。

 周りがゆっくりと動いているように感じた。

 埃が舞うのも、光が煌めくのも、深月の髪の毛が震えるのも、

 全て、見える。

 ダッ

 床を蹴る。

 風がわたしを切り裂くように感じる。

 「深月っ!武器持ってきた」

 簡単に説明して、彼の武器の銃を渡した。

 絶対に負けないから。

 家族の願いを叶えてみせるっ!
 わたしの武器の短刀を、両手に構えた。